開店20年を記念して、住民を招いたのは、北山通に焼肉レストラン「南山」を構える孫時英さん(65)。
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佐目地区は、56戸の集落。1972年に完成したかんがい用の永源寺ダムの建設で、周辺の集落とともに水没した。
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孫さんは店に来た知人の画家から「今、水没する村の絵を描いている」という話を聞いた。翌日、現地を訪ね、ただひとつ残っていた河合庄兵衛さん(65)の家を譲り受けて店を開いた。
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「農家レストラン」という物珍しさもあって、開店直後から人気が集まり、今では全国に30数社に持つまでに事業は拡大した。
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この日、孫さんは「水没しようとする家の大黒柱に触ったとき『おれはまだ生きられる』と叫ぶ声が聞こえた気がした」とあいさつ。元住民を代表して、河合さんが「村は失われたが、この家がこんなに大勢の人に利用されているのはありがたいこと。末永く大事にして下さい」と答えた。
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20年を記念してレストラン入り口には「永源寺館」の看板が掛けられた。その横には「この家と共にあった平安なたたずまいは永遠にその姿を消しました」と由来が書かれている。 |